のんきとのその後3細かい事に拘る様だが、この時点まで、のんきはまだ正式に交際して下さいとか、 彼女になって下さいとか、そういう話を私にしていない。 なんとなく区切りってものを大切にする『変なトコ日本人』な私は、 多少順序が逆になっても、その辺の要所は押さえておいて欲しいと思った。 追いかけて来る位だから真剣なんだろうけど、 だったらなんでそういう事ちゃんと言ってくれないんだろうと思っていた。 用心深い私は、相手は外人だ。『土壇場でどんでん返し』って可能性もある。 っと考え、余り深く入り込んで傷つかない様に、 『無意識の一歩後退』を常としていた。 ローズの所での1ヶ月は、とても楽しかった。 嫌な思いをして2回もステイ先を変えていた日本人の留学生も何人かいた中で、 「ちゃんと楽しんでる?行きたい所があったら出掛けて来なさい。 こっちいいる間にいろいろなものを見て、いろんな事をしないと損よ。」 が口癖だったローズとその娘達との生活は、 生まれて始めて親元を離れた私にとって、とってもリラックス出来た時間だった。 もう1ヶ月延ばそうかと思うくらい、後ろ髪惹かれる思いだったが、 私は友達が先に住んでいたアパートに一緒に住む事になっていたので、 予定通りにスーツ・ケース一つでの引越しをした。 友達の借りていたアパートというのは、ダウンタウンの真っ只中にあった。 ゲートがあって、そこにカード・キーを挿してドアを開ける様になっていて、 ジャクジーと温水プールが24時間使える、とっても贅沢なアパートだった。 寝室が二つあって、当時で$850。凄い金額である。 私がまだ日本にいた頃から、アパートを彼女とシェアする事になっていたのだが、 私がもしその時点でそこにいたら、もっと安い所にしようよ、と言っていたはず。 学生の身分で借りられる部屋の枠を超えていると思った。 私が彼女のアパートに引っ越して暫くした頃、 のんきが日本から引っ越してきた。 新しい基地に赴任したその足で、トロリーに乗って会いに来てくれた。 その晩、引っ越してきて間も無い私の部屋に泊って、 翌日から一旦実家であるサウス・キャロライナに帰って、 1週間家族と過ごした後、戻って来る事になっていたのだが、 「せっかく会えたのに、行きたくない。」と頻りに言っていて、 朝起こして空港まで連れて行くのに愚図られるほどだった。 のんきは結局こっちに帰って来るまでの毎日、実家から電話と手紙をよこした。 無事に帰って来て、こっちでの仕事も始まって、 私は相変わらず学校に行っていたしで、お互いいろいろ忙しく過ごした。 それでも週末になると、お互いよく分らない街の中を散歩したり、 モールをブラブラと歩き回ったりした。 ある日の夕方、うちで彼女と3人でご飯を食べて、 私が片づけをしている間に、ジャクジーへ行った友達を追いかけて、 「ちょっとでもいぶらの友達に良い印象を与えておかないとね。」 と、私にウインクをするとタオル片手に出て行った。 その後30分ほどで戻ってきたのんきは、ちょっと変で、 理由を聞くと、 「彼女、いぶらと僕が付き合っているのを良く思ってないみたい。 僕の顔をじぃーっと見るんだよ。何も言わないで、、、 それで、『いぶらは変わった』って言うんだ。 どう変わったの?って聞いてもはっきり答えてくれないし、、、 『でも彼女が来たらいろんな所に遊びに行こうって考えてたのに、、』 って言ってた。僕が彼女の計画を邪魔しちゃったんだね、きっと。」 っと寂しそうに呟いた。 彼女の彼は、私の連絡をよこさなくなった元彼の友達だった。 ある日ダイニング・テーブルで勉強していると、 彼女が私に、のんきに解らない様に丁寧な日本語で、 「船に乗っているあの人(彼女の彼)に、ちゃんと彼氏が出来たって説明して下さい。 そして、私(彼女)は、それには関係してないと。そうでないと、 『いぶらに彼氏が出来たって事は、お前にも居るんだろう』 って疑われますから、、、」 だからぁ、のんきは日本語を勉強してるんだってば。 リビングでテレビを見ていたのんきは、彼女の話の内容を『ほぼ』理解して、 私が「船」(つまり海軍)に彼氏が居ると勘違いして、 とたんに機嫌が悪くなった。 後で事情を説明して誤解は解けたけど、 当時ののんきは切れやすくてとっても大変だった。 この辺りから、のんきは彼女に対して不信感を持ち始めていた様だ。 ある日彼女の彼が電話をして来た。 私にかわって欲しいと言われて、彼女が私に受話器を差し出した。 いろいろ話しているうちに、「何よ彼氏が出来たんだって?」 と聞かれて、なんと答えていいか詰まった。 だって、ちゃんと付き合って下さいって言われてないもん。 「うん、まあそんなもんがいる。」と答えたら、 のんきが切れた。 私が前の彼氏に未練があると誤解した、と後で説明された。 だから私もあの時、なんですぐに返事が出来なかったのか、 その時の気持ちを説明した。 自分の思っている事を口にするのが苦手な私には、 恥ずかしくってなかなか上手く説明出来なかった。 「そんな事改まって言わなきゃ付き合ってる事にならないの?」 とつくづく不思議がっていたが、その場でちゃんと 「じゃぁ、今日からいぶらと僕は彼女と彼氏だよ。よろしくお願いしまぁす。」 と言われた。 あっ、そんなに簡単な事だったのね。 のんきとのその後4に続く |